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吉川友梨さん不明事件 捜査尽力の元捜査員、事件発生丸16年の日に亡くなる

大阪府熊取町で平成15年、小学4年だった吉川友梨さん(25)が行方不明になった事件で、解決に心血を注いだ大阪府警の元捜査員が事件発生から丸16年となった今年5月20日、亡くなった。府警捜査1課に長年所属した加津一真(かつ・かずま)さん、享年69。退職後も足しげく現場に通っていたといい、妻の恵子さん(66)は「心の底から事件解決を願っていた夫の無念や熱意を感じた。命日が事件発生日と重なるなんて」と振り返った。(小松大騎)

 「情が深くて真面目。人間味のある人だった」。恵子さんは夫の人柄をこう語る。加津さんは島根県出身で、昭和51年に府警に採用された。捜査1課には通算で10年間所属し、事件発生直後の平成15年5月から友梨さんの事件を担当。退職するまでの7年間、捜査を指揮してきた。

 ただ、捜査は難航。現場では不審な白い車が目撃されており、友梨さんは何者かに車で連れ去られたとみられるが、悲鳴や物音を聞いた人はおらず身代金の要求もなかった。手がかりは少なく、時間だけが過ぎていった。家族に弱音を吐いたことは一度もなかったが、恵子さんは、深夜に帰宅してたばこを吸いながら考え込む加津さんの姿が印象に残っているという。

 事件発生から約7年が経過した22年春に退職。親族には「友梨ちゃんの事件を解決できなかったことが一番の心残り」と漏らした。退職後も友梨さんの顔写真や地図などが入った愛用の手帳を持って事件現場に足を運んだ。自宅のカレンダーには友梨さんの誕生日に印を付けていた。

 29年9月、自宅で倒れて搬送され、胃と食道のがんが判明。腫瘍の摘出手術や抗がん剤治療などを行ったが、友梨さんが行方不明になって16年にあたる今年5月20日に亡くなった。

 葬儀は近親者だけで営まれたが、加津さんを慕う府警の捜査員やOBら約30人が駆けつけ、「とことん仕事に打ち込んでいた」などと恵子さんに声をかけてくれた。

 恵子さんは「まさか、夫の命日が友梨ちゃんの事件発生日と重なるとは。事件に長く関わった夫の無念や熱意を感じた。天国の夫を含めて、事件解決を心から願っています」と話す。

 捜査班の班長だった加津さんの下で働いた現府警捜査1課調査官の井上光浩警視は「実直で、部下思いな方だった。部下と同じ目線に立って意見を聞いてもらえた」と振り返る。

 友梨さんの事件について「必ず助け出す。ご両親のもとに返したい」と常々口にしていた加津さん。井上警視は「その遺志は捜査員に受け継がれている」と話し、こう誓う。「友梨さんの帰りを待ち続けているご両親のために、一日も早く事件を解決し、加津さんにも良い報告をしたい」

 ■吉川友梨さん行方不明事件

 大阪府熊取町で平成15年5月20日、当時小学校4年だった吉川友梨さんが下校中に行方不明になった。大阪府警は事件を最大の懸案と位置づけ、捜査本部のある泉佐野署に専従捜査班を配置。友梨さんが最後に目撃された現場近くに止まっていた白色トヨタ「クラウン」(昭和62年〜平成2年製造)とみられる不審車の割り出しや、過去の捜査資料の読み返しなどを続ける。今年4月末までに捜査員延べ約8万9千人を投入し、昨年1年間で捜査本部に寄せられた情報提供は350件だった。公的懸賞金である捜査特別報奨金(上限300万円)の対象。情報提供は捜査本部(072・464・1234)。